入院以前 そのに

 そして、四月九日。

かなりタイトなスケジュールで東京へ出掛けたメインえべんとのお祭りの最中。―――初めて、目の異常をはっきり感じた。
左目の見え方がおかしい。
コンタクトが裏返ってる?
 元々、ソフトレンズでは乱視の矯正が出来ないが、面倒がりの私は左右同じレンズを入れている。こうすると左目の視力が若干落ちてしまうのだが、普段は気になるほどではない。が、この日、九段会館の二階席から見る舞台は暗く、もうこの頃は慢性になっていた頭痛ともあいまって、なんか「おかしい」のは間違いないな、と感じた。
だが、時はお祭りの真っ最中なんである。
おまけに上京中だ。
 まあ、帰宅してからコンタクトを作りに行くついでに診てもらえばいいや、と、そう思い、
やはり深く考えることはなかった。
 大典の夜は軽く呑みのあと、友人宅に宿泊。
 あまりに頭痛がするので、バファリンをビールで流し込むという暴挙に出たが、まあこれも普段から時々はやっていることなのでご愛敬(をいをい)。
とにかくこの日は興奮していたので、多少の頭痛とか見えにくさとか、そういう事はもうどーでもよかったんである。ある意味人生最高の時を経験した直後であるからして。文字通り見えてなかったのである。まる。
 そして。
忘れもしないその日が近づいてきた。