入院以前 そのさん

忘れもしないその日、東京は快晴の花見日和。

実際、栗本MLはお花見だったのだけど、福岡での先約があって不参加。羽田に向かう途中でちょっとだけ寄れたらなあと思いつつ、慣れない土地で慣れないことをしてはアブナイ、と断念。さっさとモノレールに乗って羽田へ着く。
 相変わらず頭痛がひどい。どこかで落ち着きたくて喫茶店を探す。フレッシュネスバーガーが目に入るのだが、とある理由で入店せず。
これがのちのち大きな後悔を産むことになるとは…思いも寄らなかったのであーる(涙。

ここで荷物を整理確認していて、あることに気が付く。…昨日のお祭りのお土産にイラスト付きのバッグをいただいたのだが、ワタクシのコレ、間違えてヒトのを持ってきてるわ…コレ、ハヤカワの封筒に名前が…いや、ヒトのとは言っても知人のなんですけど…。
ご、ごめんなさい…
どーりで、あるはずの本が入ってなかったわけだ…

なんかもう、頭痛は痛いし荷物は間違えてるし、しゃっきりしないなあと落ち込みつつ、お土産を買って搭乗し、席に座って本を開く。
ちなみに、このとき読んでいたのはグインサーガ100巻(特装版)。
ここで、昨日の九段会館から感じ続けていた「おかしさ」が確信に変わった。
見えてないのである。
いや、全然見えないわけじゃない。が、ところどころ…というか、あちこちにモザイクが飛んでいる状態なのだ。
「本を読む」という作業をしていると、誌面だけを見ることになる。文字が並んでいる「かたち」を見ていると、あちこち見えないところがあるのがはっきり判るのだ。
 まあ、そこで「読むのをやめよう」と思わないあたりが自分でも業だと思うのだけど…。

右目では、見えている。
左目で見ると、間違いないく「見えない場所」がある。

飛行機の中で頭痛を抱えながら、福岡に帰ったらその足で眼科へ行こう、と思った。

      *  *  *  *  *  *

昼過ぎに福岡へ着いた時、外は雨だった。
東京は快晴で周りが眩しかったが、福岡は雨で周りが見えにくい。見えにくいので余計に頭痛もひどくなる―――気がする。
職場へお土産を届け、ちーむの子に東京で見た新刊の話をしつつ。
「左目があんまり見えてないからさー、コンタクト屋の先生に見てもらってくるわ」
「まあ、確かに一応眼科ですからね」
コンタクトレンズのショップは職場と同じビルにあるので、荷物をバックヤードに置いて出掛ける。どう考えても目はおかしい。が、日曜日なので眼科はまず開いていない。この状態でまさか全然悪くないってことはないだろうし。もしモーマクハクリ…なんて事だったら、診断すればすぐに判るだろう。
 が。診断は
「別に目に異常はありません。」
だった。
え?
「まぶたに少し炎症があるようですね。十日くらいみてください」
あのー、見えてないトコがあるんですけど。
センセイ、うすく笑って
「ああ。炎症おこしてるところから粘液が出てるんでしょう」
…はあ、そうですか。
拍子抜け。

こっちは絶対なんかある、と思ってたのに。
いやでも、まあ、いっか。いやむしろ、大丈夫ってことでショ。

「視力は測定不能ですけど、処方は出来ますよ」
とは言われたけど、なんか面白くなくて結構ですと答える。当然購入もせず。まあ、あと十日待って見えるようになってからでいいや、と思ったのだ。

ちなみに、目薬を処方してもらって診察代計二千円。

なにか釈然としないままいったん帰宅。
荷物を置いてから、旦那も待ってる馴染みの居酒屋常連花見に出掛けるも、外は雨というより、風は凄いわ…ほぼ嵐。
お腹は空いていたのでバーベキューの肉肉野菜肉野菜肉やら焼きそばやらビールやらは平らげたのだが、ここにきて一番、頭痛が痛い。
ずっとしかめっ面をしているらしく、まわりも体調を気遣ってくれるのだが、まあ目はよく見えないわ、頭は痛いわで、旦那を置いて早々に退散することにした。
 家に帰って荷物をほどき、ここ数日留守にしていたせいで片付いてない家の中をほったらかしたまま、布団と抱き合う。ごめんよなまこさん、明日は午後から仕事だから、明日片付けるよ…
後にいったん起きて自分の日記を付けたものの、それだけで一時間かかる始末。
はあ…
これが十日も続くのか…